オープンイノベーションを上手く活用している企業が成功しやすい

 オープンイノベーションを上手く活用している企業が成功しやすい中小企業白書(2017年度版)では、「新事業展開に成功した企業と成功していない企業を比較すると、成功した企業の方が、オープンイノベーションの活用割合が高いことが分かる」ことが示されています。

オープンイノベーションとは、「自社だけでなく他社や大学、地方自治体など異業種・異分野が持つ技術やアイデア、ノウハウなどを組み合わせて革新的なビジネスモデルや製品開発などにつなげる方法」のことです。

さて、中小企業白書(2017年度版)では、オープンイノベーションを以下のように分類しています。

  • 技術・ノウハウを持った企業との提携・共同研究開発
  • 大学・研究機関との共同研究開発
  • 産学官連携による共同研究開発
  • 国・地方公共団体による技術支援

また、オープンイノベーションの効果を以下のように分けています。

  1. 新規顧客の獲得
  2. 売上高の増加
  3. 従業員の意欲向上
  4. 自社の知名度向上
  5. 技術力の向上
  6. 利益の増加
  7. 人材育成
  8. 雇用の増加

オープンイノベーションは目的によって使い分ける

以下、成功した企業について見ていきます。

A)新規顧客の獲得に最も効果が高かったのは、国・地方公共団体による技術支援でした。他が60%台であるのに対し、唯一70%台を示しています。

おそらく、他のオープンイノベーションが研究開発要素が強く、新規顧客の獲得まで時間がかかったのに対して、顧客や課題が明確な案件を持ち込むケースが多いのでしょう。しかし、売上高の増加については最も低く、早く売りが立つがたつものの大きな売上には至らない可能性があります。

また、国・地方公共団体による技術支援では、C)従業員の意欲向上についても最も高い効果が出ています。この技術支援はある程度企業側が主体的に動かなければならないために従業員に仕事を任せる傾向が強いためでしょう。その結果従業員のモチベーションが上がることが考えられます。

D)自社の知名度向上が最も高くなったのは、産学官連携による共同研究開発でした。産学官連携による共同研究開発は地方公共団体と大学などが連携して事業を進めるため、成功した成果を広く宣伝してくれることが原因でしょう。自社の知名度を高めたい場合には産学官連携が効果的ということのようです。

一方、E)技術力の向上大学・研究機関との共同研究開発がもっとも高い結果となっています。事業に適した研究をしている適切な大学と連携することで技術力の向上が図られたためでしょう。逆に言えば適切でない大学と連携しても技術力の向上は図られないためどの大学と組むかという選択は重要です。

このように、オープンイノベーションといっても、単にどこかと連携すればいい結果が出るというものではなく、目的に合わせて組む相手を選ぶ必要があるのです。

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