市場の変化についていけない企業はいずれ衰退する
いままで、中小企業白書(2017年度版)の第3章 ”新規事業の促進”の章を見てきました。最後になりましたが、白書に記載されている新規事業の方向性について取り上げたいと思います。
新規事業の取組(戦略)としては第2-3-1図に示すように、①市場深耕戦略、②新市場開拓戦略、③新製品開発戦略、④多角化戦略、⑤事業転換戦略の5つの取組があります。
もし、今自社がいる市場が拡大しているのであれば①市場深耕戦略をしっかり行えばよいのです。例えば、自動車の市場は大きく発展してきました。国内の市場は横ばいですが、海外への輸出や海外生産が増加しています。今後も電気事業車や自動運転などの技術革新が期待されており、大きな市場を形成し続けると予想されています。その市場にいるプレイヤーは市場の進化に追随することができれば大きな利益を手にすることができます。
一方、現在の市場が成熟しており、今後衰退するとか、競争が厳しくて利益を上げることができそうもないのであれば、新規事業を行わないと企業は衰退します。
つまり、市場深耕であれ新規分野への進出であれ、市場の変化についていけない企業は衰退するということです。
新規事業を行う企業は利益率が高くなる傾向が強い
第2-3-2図を見ると、新事業展開を行っている企業は行っていない企業に対して経常利益率が増加することがわかります。中でも多角化とか事業転換をした企業の利益率が高くなっています。
しかし、多角化は新しい商品を新しい顧客に売る戦略であるため、成功すれば利益率が高くなりますが、失敗することも多いのです。
既存の商品を新しい顧客に販売する新規顧客開拓戦略は、多角化に比べると成功する確率は高いのですが、新しい顧客を開拓することは結構な手間と時間がかかります。特に製造業の方はマーケティングやセールスが苦手な企業が多いため、何をどのようにしていいかわからないというケースをよく見てきました。
そのときには、既存の顧客に対しての新商品・新技術開発がやりやすい方向ですが、既存商品の単なる改良にとどまってしまっては大きな利益を上げることは期待できません。
新事業を成功させるためには、自社の商品力、販売力、技術力などを十分に把握して、進みやすい方向に向かいとにかく一歩を踏み出すことです。そして、少しづつでも前に進みつづけることが肝要です。