前回、特許出願傾向をFIで見てみたが、A~Hまでのセクションごとに見ていきたい。
Aセクションの出願傾向はA61(医学、獣医学)が圧倒的に多い
Aセクションはさまざまな分野に分かれている。その中でもA61(医学、獣医学)の出願件数(2000年~2017年)が圧倒的に多い(図1参照)。
図1を見ると、A61(医学、獣医学)の出願件数は二番目に出願が多いA63(スポーツ、ゲーム)に比べて2.5倍以上も出願件数が多い。医学、獣医学の市場規模は他の分野に比べて非常に大きいことが示唆される。
A61は、A61B、A61K、A61Pなどの出願が多い
A61(医学、獣医学)の分類の中身を見てみると、多くの技術分野のうち、A61K(医薬用・歯科用・化粧用製剤)、A61P (化粧品等の特殊使用)、A61B(診断、手術)の順番で出願件数(2000年~2017年)の出願件数が多い(図2参照)。
A61Bは手術用機器の出願が一番多い
ここで、A61B(診断、手術)がどのような商品・技術に分類されているか詳しく見た。
商品や技術を見る際にはFIではなくFタームという記号をもちいるとより具体的に見ることができる。Fタームで分類し直すと、A61B(診断、手術)は「内視鏡」「目の診断装置」「診断用測定記録装置」「放射線診断機器」などに分類されている。いずれの商品も医療用機器としては大きな市場を持っているが、中でも出願件数の一番多いのが手術用機器であった。
診断、手術関連の出願件数の伸び率は全体的に低いか減少傾向
さて、いままで単に出願件数だけを見てきたが、出願件数の伸び率についても分析してみた。図4は縦軸に出願件数をとり、横軸に直近5カ年の出願件数(2014~2018年)の増加率をとった。出願件数が多いことはそれだけ世間の注目度が高いことを意味している。また、出願件数の増加率が高いことは、それだけ魅力的な研究テーマであり、市場の成長性が高いことを示唆している。
そのように見ると、医療器具関連の発明はある程度成熟化しており成長の余地はそれほどないようにも見える。とくに大きな市場を形成している「手術用機器」「放射線診断器」「内視鏡」「超音波診断装置」は出願件数が減少しており、市場の成熟化がうかがえる。
ただし、診断用測定記録装置や目の診断装置は、わずかだが、出願件数が増加している。これらの分野は、出願件数が少ないため市場もちいさいと考えられるが、ある程度の成長が期待できそうである。
市場は安定成長
出願件数が減少している分野のうち、内視鏡の市場推移を見ると、市場規模は微増であり、大きな成長はしていない。市場規模が微増にとどまるのは、市場が成熟化していることを意味しており、特許出願件数が減少傾向であることにも関連していると思われる。(図は富士キメラ資料より作成)
このように、特許の出願傾向と情報と市場状況をすりあわせると、ある程度の相関関係が得ることができる。