1.商品開発4つの入口
商品開発の入り口(動機)を見ると2つの軸があります。
一つ目の軸は、「何かやらなくちゃならない」という漠然とした想いから始めたか(自発的)、他人から「こういった商品を開発してほしい」と請われて始めたか(他発的)という動機軸です。
もう一つの軸は「商品が世の中にない新しいものか(新商品)」、「すでに他社が販売している商品の模倣か(類似商品)」という商品軸です。
これらの軸でマトリクスをつくると以下の4種類のパターンに分類できます。
- 自社独自のアイデアを元にして開発したオリジナル商品(自発的新商品)
- 他社商品を参考にしてつくった自社商品(自発的模倣商品)
- 他社が決めた機能や性能を満たすために自社で開発・製造した商品(委託商品)
- 他人からの要求や依頼で行った商品の改良(改良商品)
① 自分で考えた新しい商品の開発(自発的新商品)とは、「何か新しいことをしなければならない」といろいろ模索している企業においてよく見かけるパターンです。
展示会に行ったり、資料を読んだり、いろいろ考えて「これなら面白いんじゃないか」とひらめいて開発するケースです。このようなケースは技術力や企画力のある会社が行う場合が多く、うまく成功すると世の中にない新商品を完成させ、企業を成長させる原動力となります。
身近な大成功の例としては iPhoneをあげることができます。今までにない新商品を開発したことでApple社は極めて大きな成功を収めました。
しかしこのやり方は、自分の企画や技術に惚れ込んで「これは良い商品だからきっと売れるに違いない」と周りをよく見ずに突き進んで「単なる思い込み」に陥り失敗に終わることも多いパターンです。
つまり、自分自身の考えにはまり込み顧客の意見や他人のアイデアを取入れて改善する姿勢が欠如するため、ニーズの把握や競合商品との差別化が不十分になります。
その結果かなりの時間と金と労力と費やして商品化をしたものの、顧客にとってまったく魅力のない商品となるのです。
② 自分で考えた他社商品を模倣した商品の開発(自発的模倣商品)とは、他人の商品(先行商品)が成功しているのを見て「よし俺も同じものを真似して儲けてやろう」と考えて始めるパターンです。
開発力があって先行商品よりも付加価値の高い商品を開発ができる場合や、営業力が強く開発した商品をガンガン売れるような場合にはかなりの成果を上げることができます。
よくスーパーなどで見かけるプライベート商品はその一例です。商品によってはかなりの売上を上げています。
一方、模倣先の商品との差別化ができず「単なるものまね」に陥り失敗することも多いパターンです。
「同じような商品を開発すれば売れるだろう」と安直に考えて始めるのですが、顧客からすれば先行商品で間に合っているため、わざわざ同じものを買おうという気持ちになれません。
結果として価格をかなり安くして何とか売り込めれば上出来と言う状況に陥ってしまうのです。
③ 他人から言われて始めた新しい商品の開発(委託商品)とは、「こういう新しい商品を作ってくれないか」と顧客から依頼されて開発するパターンです。顧客からの依頼なのでニーズや市場情報などが入手しやすく、また商品が完成した場合に購入先が決まっているため販売が容易です。
さらにシリーズ化などでアイテムを増やしたり、今まで気がつかなかったニーズを発見できれば大きく売上を伸ばすことも可能となります。
このパターンは、例えば自動車の部品や家電品の材料などが多く、一般消費者の目に触れることはそれほどありません。しかし、顧客が大企業である場合などに、いい商品を開発すると大きな売上を上げることも少なくありません。
一方、商品はできたけど依頼された最初の一個しか売れなかったという単なる「下請け」に陥り失敗するパターンも多く見かけます。顧客からの依頼であるため深く市場の規模や成長性などを調べずに進めて、かなりの時間と金をかけて商品開発をしたけど「作った、売れなかった」となるケースです。
そのような場合に「購入してくれる他の顧客はどこにいるのか」、「どのように販売すればいいのか」がわからず、結局売れなくてやめてしまうのです。
④ 他人から言われて始めた模倣商品の開発(改良商品)とは、既に販売されている商品の改良を行うことです。一般的には、顧客から商品の不具合点や改善点を指摘されて取り組むことでありよくある企業活動の一環です。すでに販売実績のある商品である場合が多く、改良の効果が高ければ売りやすい商品となります。
自動車、家電、パソコンなど定期的に新商品を出しますが、まさにこのパターンと言えます。
一方、単に顧客が指摘することだけを言われるがままに行うだけだと、「単なる改良」となり、従来商品との差別化がほとんどない商品ができあがります。そのような単なる改良品は一部の従来品の置き換えにとどまり大きな市場を形成することはありません。
また市場をほとんど見ないで開発するため、その次の改良の方向性や今後の顧客の求める商品などの将来を見る目が失われてしまいます。
その結果、商品の寿命が尽きるとともに顧客にも見放されて苦境に陥ることとなります。
以上、今まで4つのパターンを見てきましたが、どのパターンでも成功することもあれば失敗することもあります。何も考えずに単純に手足を動かしているだけだと多くの場合は失敗に終わります。
一方で、市場や技術動向などをよく考えながら進めていくと成功する確率が高くなります。
商品開発のきっかけはどのようなものであれ、自社の置かれたポジションや、市場の動向、顧客のニーズなどをよく考え、自社の強みを活かしながらより付加価値の高い商品作りに挑んでいる企業が成功をつかむのです。