市場情報を分析するためには
市場情報を分析するはフレームワークを用いる
市場情報とは、特定分野におけるプレイヤー、市場規模、シェア、市場成長性などの情報であり、様々な機関が市場情報を提供しています。使い勝手がいいのが国の機関(経済産業省、厚生労働省、環境省など)が定期的に発行している統計データです。また、業界団体や民間のマーケットリサーチ会社、研究機関なども市場情報を提供しているので、これらの情報を活用しながら分析を行います。
市場分析とは市場情報を加工することですが、よく用いられるのがフレームワークを使う手法です。フレームワークは定型的な形に情報を当てはめていき市場や情報をひと目で見ることができる図に落とし込むことです。そうすることで市場での情報から様々な事象を読み取ることができるようになります。使い勝手のいいのが、ファイブフォース(5F)、3C分析、ポジショニングマップです。これらについて簡単に説明します。
ファイブフォース(5F)
ファイブフォースは市場を俯瞰できるツール
ファイブフォース(5F)は「市場」、「顧客」、「サプライヤー」、「新規参入者」、「代替技術」の5つに分けて、どのようなプレイヤーがいるか示したものです。市場全体を俯瞰するために有用なフレームワークであり、マーケットシェアなどの情報を加えるとより勢力関係が明確になります。
ただし、顧客情報、競合情報、サプライヤー情報、新規参入者、代替技術など様々な情報を整理しなければならないため、詳細なマップにしようとするとかなりの労力がかかります。また、顧客や競合、新規参入者や代替技術などは簡単に調査することができない場合が多く、完全なマップを作成することはかなり難易度が高いのです。
したがって、ファイブフォースを作成する場合には、最初から完全なマップを作成するのではなく、集めやすい情報からフレームワークに組み込んでいくことから始めるといいでしょう。要は、市場には様々なプレイヤーがいて、それらを意識しながらビジネスをすることを心がけることが大事です。
ファイブフォースの縦軸はサプライチェーンを意味する
さて、ファイブフォースの縦の流れがサプライチェーンです。ここで、顧客の先にいるエンドユーザーまでの流れを意識して作成することは戦略を立案する際に非常に重要です。
つまり、直接商品(製品)を売っている売り先だけではなく、その先のエンドユーザーまで意識すると、自社の商品(製品)がどのように使われているかがわかるからです。さらに分析を進めると、将来伸びそうなのか、消滅しそうなのかまで推測することができます。例えば、自動車用部品を製造している会社は、直接の顧客である自動車用機械メーカーの動向だけでなく、最終的な自動車のどの部分に使用されているかを把握すれば、今後その自動車が伸びていきそうか、減少しそうか予測することが容易となります。
ファイブフォースの横軸は将来の競争状況となる
ファイブフォース横軸は競合状況を示しています。その市場が魅力的であれば新規参入者が必ず現れます。特に、新規参入者は日本のみならずアジア諸国(中国、東南アジア、インドなど)を意識する必要があります。
また、市場における技術よりも優れた技術(代替技術)が現れると既存の技術が陳腐化してしまい、自社の商品が売れなくなる恐れが生じます。技術者としては特に代替技術にどのようなものがあるのか、将来どれくらい驚異となりそうか、などを把握することは非常に重要となります。
3C分析
3C分析では自社と競合との位置づけがわかる
3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの頭文字を取ったもので、市場のプレイヤーについて詳細に分析を行うものです。競合を意識しない企業も多いのですが、市場には必ず競合がいて競争をしています。ここで重要なのが、顧客における自社と競合との位置づけです。
3C分析では顧客におけるシェアを意識する
例えば、顧客における自社と競合との商品シェア&推移がわかると自社の強みや弱みを知ることができます。
仮に重要顧客(図の顧客A)における自社の主力商品のシェアが競合よりも圧倒的に大きければ、顧客Aにとって自社は重要なサプライヤーです。一方、全くシェアがない顧客(図の顧客E)にとっては、自社は存在していないのと同じです。
図は顧客A~Eまでのシェアを示していますが、これを時系列に見ていくと、顧客ごとにおける自社と競合の位置づけがよくわかります。仮に、顧客の市場におけるリーダー顧客における自社商品のシェアが高ければ、自社の位置づけは高いこととなります。逆にシェアが低ければ厳しい状況に置かれていることとなります。
そして、多くの場合にシェアが高い理由は他社に対する競争優位性となります。逆に、シェアが低い理由は競合に差別化されている要因となるのです。
ポジショニングマップ
ポジショニングマップは一種の3C分析
ポジショニングマップは顧客と競合と自社の位置を図にしたものであり、簡単なマップなので比較的よく作成されます。よく見るのが、縦軸に価格を取り、横軸に商品機能を取るという図です。この図は一般的に正の相関をもった図となりがちであり、あまり多くの情報を読み取ることができません。
ポジショニングマップは縦軸と横軸になにを取るかが重要
ポジショニングマップで実際に役に立つ図を描くことはかなり難しい作業となります。弊社で推奨しているのは、縦軸にユーザーニーズを取り、横軸に商品の機能を取る方法です。そうすることでユーザーニーズに対する商品機能という切り口での自社の立ち位置を知ることができるからです。また、ユーザーニーズも様々に変更して、対応する機能を横軸にとりながら複数のマップを作成することで、その市場における各企業・商品のポジションを明確にすることができます。
定性的ポジショニングマップは大きく市場を見るときに便利
ポジショニングマップで取る縦軸と横軸は定性的なものと定量的なものとに分けることができます。
定性的なものは大きく市場を俯瞰したいときによく用いられます。例えば、図の例は医療用機械について示したものです。縦軸に「家庭用」か「病院用」を取り、横軸には「予防」か「治療」と取ります。そうすると、商品によっては「病院用・治療」や「家庭用・予防」というようなポジションに大きく分けることができます。
定量的ポジショニングマップは詳細に分析をするときに便利
定量的なポジショニングマップは縦軸と横軸に数値(または数値にちかいもの)を取ります。図の例は家庭用治療機の場合で、縦軸に「治療の程度」を数値で示し、横軸には「温熱治療の機能」の機能を数値で示します。その結果、自社と競合との「温熱治療の機能」におけるポジションが明確になります。
ファイブフォースと3C分析とポジショニングマップはお互いに関連している
いままで、ファイブフォースと3C分析とポジショニングマップについて述べてきましたが、これらはお互いに関連したものです。3C分析はファイブフォースの市場(自社と競合)と顧客の関連を分析したものであり、ポジショニングマップは3C分析をマップにしたものです。
ファイブフォースにしてもポジショニングマップにしてもマップを作成するだけでは意味がありません。作成したマップから何を読み取るか、今後自社はどう動くかという方向に結び付けられなければマップを作成することは徒労になるでしょう。要は、目的意識を持ってマップを作成することが大事なのです。