特許情報で押さえておくべき2つの記号の特徴
特許情報はデータベースとなっているため、情報の検索、整理や分析に効果的です。特許はフリーキーワード、FI記号、Fタームといろいろな方法で検索ができます。特に、特許情報はFI記号やFタームといった記号で分類がされているために、非常に使い勝手位のいいデータベースとなっています。
フリーキーワードは普通の言葉で、とっつきやすいのですが、誤差が大きいため単独で使うと、ノイズが多く、漏れやダブリが多くなる傾向があります。フリーキーワードのみの検索はかなり言葉を選んで使う必要があります。
フリーキーワードに代えて、またはフリーワードと一緒にFI記号やFターム記号を用いて検索を行うとより効果的に検索を行うことができます。(下図は特許庁のHPからの抜粋です)
(特許庁HPより)
FI記号は樹形図的な階層分類であり、上下関係が明確
FI記号は国際分類(IPC)を日本の産業に合わせた形で細分化したものであり、IPCと類似しています。分類は樹形図的な構成をしていて(図参照)、大から小へと分岐しています。そのため、体系的に特許を検索することができます。
例えば、下図はろ過機についてのFI記号を樹形図的にまとめたものです。一番上位の分類からどのように技術が枝分かれしているがわかります。また、この分類をベン図(複数の集合の関係や、集合の範囲を視覚的に図式化したもの)でまとめると下図のようになります。この図を用いれば、自社(または競合)の技術が強い分野や弱い分野などが一目瞭然となります。
一方、調査したい項目(例えばその技術の「目的」や「用途」を見たい場合など)がアチコチに分散していることが多く、一つの軸で分析する場合には使い勝手が悪かったりします。私見ですが、FI記号は技術分野の大きな把握をするのに向いており、より詳細な分析をする場合にはFタームを用いるほうが適切です。
Fタームは一つのテーマにフォーカスした詳細な分析が可能
Fタームは日本独自の分類方法であり、テーマを決めて目的や構成などが分類されたものです。テーマは膨大に用意されており、テーマごとに「観点」を設けて詳細な分類をしています。
そのテーマに関して調査したい項目が分類されているので、上手くハマると使い勝手がいいものです。特に、用途や目的、課題などが記載されているFタームはその分野を分類するのに重宝します。
先程の濾過に関連するFタームは下図のようになります。Fタームの情報は膨大なので、下図はごく一部のみの表示です。図を見ると、観点ごとにさらに詳細に分類されていることがわかります。特許情報はマップを作って全体像を把握する
特許情報は検索をするとものすごい数がヒットします。とてもいちいち読んでいられません。そこで、調査情報を読み解くためにはマップ化することが効果的です。
マップ化するには検索した特許情報をcvs形式でダウンロードし、特別なソフトでマップを描く必要があります。
比較的かんたんな図はエクセルで作れる折れ線グラフです。下図はろ過機に関する特許出願傾向を示したものです。2000年から出願が減少していますが、近年は横ばいとなっています。よく用いるのが、出願人を出願年でまとめた図です。出願人がどれくらい力を入れて研究しているかを見ることができます。下図はろ過機分野の出願人傾向ですが、全体的に出願件数が減少傾向であるのに対して、赤線で囲った会社は近年の出願が増加しています。おそらく、何らかの研究テーマを見つけたため、出願件数が多くなったと思われます。
FI記号やFタームを用いるとより詳細な分析ができる
下図はFタームの分類を出願年でまとめたバブルチャートですが、「液体の濾過」という分野が近年大きく増加していることがわかります。何らかの需要があり、この分野の出願が増えていることが推測できます。この分野をさらに深堀りして分析することでより詳細な情報がわかります。特許分析はマップを作ることではなく、何をマップから読み取るかが重要
このように、特許情報分析は技術動向、出願人傾向を簡単に見ることができる便利なツールですが、分析結果は検索の仕方や図の書き方で大きく変わるものです。
大事なのはマップを作ることではなく、マップからどのような情報を読み取れるかです。別な言い方をすれば、意味のある情報が読み取れないのなら、マップを作る意味がありません。何を目的として、どのような情報が必要かということを意識しながら分析を行う必要があるのです。