新商品開発をしている企業の方と話をしていると「この会社は一体何をしたいのだろう」と思うことがしばしばあります。それは、その会社が従来行ってきた事業や製造してきた商品とは全く関連性のない新商品開発を目の当たりにした時です。
もちろん、新しい商品開発は既存事業の枠にとらわれることなく始めてもいいのですが、重要なのは「将行き着く先が明確か」という点です。
「儲かりそうだから」とか「流行りそうだから」という理由だけで、今までの事業と関係のない商品開発を始めると大体失敗します。商品開発は一過性のものではなく、将来を見据えて継続的に行うべきものだからです。
売上や利益を一過性にしないためには戦略的な商品開発が必須です。
「戦略的」とはなにか?
それは、「将来あるべき姿」を思い描き、「現状を分析」をして現在の状況をよく理解し、将来と現在とのギャップを埋めるためのシナリオを考えることです。
将来あるべき姿は定量的かつ定性的に描く必要があります。
定量的とは売上高、利益額、社員数など数値で表せるものです。多くの会社は事業計画を作成しており売上高や利益額を示した計画表を持っています。ただし、戦略的に「将来あるべき姿」を描くためには少なくとも売上が2倍以上になる計画表を作るべきです。つまり、「何年で売上を2倍にできるか」を意識することが重要なのです。達成できる期間は会社によって異なりますが、少なくても10年以内を目指すべきです。10年以内に売上を2倍にできない計画書は戦略的とはいえません。多少「大風呂敷」と言われても、計画は挑戦的であるべきなのです。
もう一方の定性的とは、「どのような商品やサービスを提供できるようになりたいか」、「まわりからどのような会社であると見られたいか」、「どのような商品、技術を持ちたいか」ということです。数値では表せない会社の能力を示す指標であり、「将来このようにあるべき」という目的になります。つまり「金儲けができればなんでもやる」というのではなく会社の「存在する意義」とか「経営の軸」を示すものです。
「将来あるべき姿」とは、「どのような商品・サービス」を販売して「どれくらいの売上・利益」を得るか。そして、それを実現するために「どのような会社になるべきか」を示すことなのです。
現状を分析するには、少なくとも自社の「強み」、自社の「ポジショニング」、そして強みを活かせる「機会」を理解する必要があります。
自社の「強み」とはモノを作る技術力です。そしてそれを支えるアイデア力や他社との協力関係、専門家などとの人脈力など様々です。ここで大切なことは、新しい商品開発のためにどれ位の力があるかを客観的に把握することです。
自社の「ポジショニング」とは、他社との比較です。特に競合他社と比べたときの技術力、開発力、知名度、市場における優位性、差別化のポイントなどです。つまり「自社ができて他社ができないこと」を理解することで今後進むべき方向性が決まります。
自社の強みを活かせる「機会」とは、自社だけに吹いてくれる追い風です。大手企業からの提携の話や、「こういう商品が作れないか」という他社から引き合いとか、社会環境の変化で自社独自の技術力を発揮できるといったことです。
これらを総合的に評価することでどのような機会があるか客観的に知ることこそ、自ら知ることなのです。
山登りに例えれば、山頂が「将来あるべき姿」であり、今いる麓が「現状」です。今いるところから山頂を目指す場合に複数のルートがありますが、自分にとってどのルートを取ることが最適であるかを考えることがシナリオです。
山は非常に大きく、複雑な形をしているため、麓「現状」から山頂「将来あるべき姿」まで一足飛びに行くことはできません。また、最短距離である直線ルートを辿って登ることは通常非常に困難です。多くの場合、多少遠回りになっても、安全かつ着実に登れるルートを取るほうが結果として早く山頂に到達できることが多く、一歩一歩着実に進めていくことこそ成功への近道なのです。そのいかに登るかというルートを進め方を示した図が商品ロードマップです。
商品ロードマップは「いつまでに(時間)」、「どこまで(達成度合い)」と、「何を」を示す必要があります。つまり、各期間ごとに「何を達成するか」をつなげたものがロードマップです。
新商品開発は単発ではなく、将来あるべき姿を見据えて継続して行うべきものです。
企業が成長し続けるためには新商品を次々と出し続ける必要がありますが、技術の軸がブレるたびに一からの開発となり時間、労力、コストにムダが生じます。そうならないためにも商品ロードマップを作成して、ブレのない商品開発を行う必要があるのです。